お米ができるまで

 三谷いしがき棚田会でオーナーが行う農作業の体験は、田植え、草取り、稲刈り、脱穀、籾すりの5回ほどですが、昔から米つくりは88の作業が必要と云われています。
八十八
(米と云う字を分解すれば…)

 棚田会でつくる品種はコシヒカリです。おいしいコシヒカリのオコメができるまでにどのような作業があるのでしょうか。

コシヒカリ栽培ごよみ

 コシヒカリってどんな品種?

 「コシヒカリ」はおいしいお米の代表選手としてよく知られています。新潟魚沼産のコシヒカリが有名なので、新潟県のお米と思われることが多いのですが、実は昭和31年に福井県で誕生しました。
 少ない肥料でも収量が安定するお米として開発されたのがコシヒカリですが、時代の移り変わりとともに食味の良さが珍重されるようになりました。






田植えまでの棚田の準備
 田んぼの準備
 耕起(こうき)/冬のうちに田んぼの土を荒く耕し、ワラをすき込みます。
 春、水を入れる前に田んぼに堆肥などを播き、土をていねいに耕します。
 代(しろ)かき/水を田んぼに入れ、土を砕いてかきならします。
 畦ぬり/畦から水が漏らないように、田の土を平鍬などで畦の内側に塗っていきます。
 よく使う田んぼの用語
 
 苗の準備
 約1ヶ月かけて苗を育成します。育苗箱を利用して苗を育てます。
 ◎種籾の準備:塩水撰、種子消毒、漬浸、催芽 育苗(播種、出芽、緑化、硬化)
 ◎育苗箱準備:消毒、土入れ
 お米がとれるまでどのくらい日数がかかるのかな?

 田植えをしてから稲刈りをするでの日数は、場所や水稲の品種によってことなります。三谷の棚田でつくるコシヒカリは、田植えをしてから稲穂が出るまでが約80日、稲穂が出てから稲刈りができるまで約40日かかります。さらに、田植え前に苗を育てる期間が20日ほどかっているので、コシヒカリは約140日かけてお米を実らせていくのです。

 

 田植え直前
 植え代をかいたら水を田面がみえるくらいまで落とし、手植えがしやすいように、田んぼの土にスジをつけておきます。





田植えの手順
 田植え当日

 育苗箱の苗を適当な大きさにちぎって、田んぼに投げ込んでおきます(田植え時の苗補給用)
     
 植え付け作業

 適当な大きさにちぎった苗をもち、目印の筋を消さないように気を付けながら、前に向かってひたすら植えましょう。1株(1ヵ所)に3〜4本程度、種籾を残すように根ごとむしり取って植えつけていきます。深さは3〜4cmくらい、苗が倒れたり浮き上がったりしないように!
  *稲は根本から枝分かれして茎数を増やしていくので、1ヵ所にたくさん植えないこと!
  *根本を3本の指で軽くつまみ、横の土壁にちょっと押し付けるようにするとうまくゆきます。

      
 お米の量や田んぼの面積の表し方

 お米の量は「Kg」、田んぼの面積は「u」で表してもよいのですが、農家の間では、昔ながらの単位で言い表すことがよくあります。代表的なものをあげてみると、

  ◎お米の量    1俵≒60Kg(玄米)

  ◎田んぼ面積  1反=10畝≒10a=1,000u
             100uの区画は「1畝」ということになります。

 ちなみに、田んぼの数は、1枚2枚…と数えます。
 これらの単位が使いこなせるようになると、あなたも
立派な農家の仲間入り(?)です。






田植え後の棚田の管理
 田植え後の作業

 除草 :除草剤を散布します。
 水管理 :入水後、深水管理、浅水管理、間断潅水、中干し、落水などと
        稲の生育にあわせて細かく管理します。
        石垣棚田は水が抜けやすいので、農家は水の管理に苦労します。
 病害虫の防除:いつもよく観察し、もし発生しているようなら薬剤等で防除します。
 イネにつく(いる)虫 (これはほんの一例です)

害虫 益虫 ただの虫
イネの葉を食べたり汁を吸ったりします 害虫を食べたてくれます イネの生育に影響しない虫です



 草取り作業

 田植えした後に散布した除草剤である程度抑えられていますが、1ヶ月もすると薬の効果が弱まってきて、やっぱり雑草が生えてきます。
 その中でも、繁殖力が大きく、田んぼの肥料を吸ってイネに害を及ぼすヒエなどの雑草は、大きくなったり種子ができたりする前に、除草してしまったほうが来年の稲作にも有効です。
 また、あぜの草は害虫などのかくれがになるので、穂が出る前にきれいにしておきます。
 イネとヒエの見分け方

 イネと雑草のヒエは外見がよく似ています。除草のときに間違わないように!
 





稲刈りの手順
 稲刈り作業

 ノコ鎌を使ってイネを刈ります。はし痒くなるので、長袖、長ズボン、長靴、軍手で身を固めましょう。
 稲刈り後すぐは水分が高いので、稲穂を乾燥させなくては次の作業に移れません。最近はてっとり早く、機械で強制乾燥させる場合が多くなっていますが、いしがき棚田では、ハゼにかけて自然乾燥させます。
 10〜15株をワラで束ね、ハゼに並べてかけ、乾燥させるのです。
  
 とれたおコメはご飯茶碗何杯分?

 お茶碗1杯には、約3,200粒のご飯粒があります。

 1株に20穂あって、1穂に80粒ほど着くとしたら、
1,600粒。つまり、2株でご飯茶碗1杯分とれる計算になります。

 
1uあたりに約22株あります。つまり1uで11杯分のおコメがとれるということになります。
 皆さんの田んぼからは、何杯分とれるでしょうか?




脱穀・籾すりについて
脱穀・籾すり作業

 ハゼ干しした稲束からをはずす作業を脱穀といいます。最近では稲刈りから脱穀までをコンバインという機械で一気に行うことが多いのですが、コンバインの持ち込めない三谷のいしがき棚田では、ハゼかけしたイネを脱穀する方法が今も行われています。
 また、脱穀した籾の籾ガラをむいて玄米にする作業を籾すりといいます。現在では籾すり機という機械で作業を行いますが、昔の名残で籾すりをすることを「臼をひく」ということもあります。

 あと一息で、植物としての「イネ」から食べられる「おコメ」になります。イネがおコメになるまでに、その呼び方はいろいろ変化していることにお気づきでしょうか。

 ◎田んぼで育っているとき   ⇒イネ(水稲)

  ◎稲刈りして、脱穀すると    ⇒籾 + ワラ

   ◎籾すりをすると          ⇒玄米 + 籾ガラ

    ◎玄米を精米すると        ⇒白米 + 糠(ぬか)

     ◎白米を炊飯すると        ⇒ご飯          になります。

 おコメがとれるまでの作業で発生するワラや籾ガラ、糠は田んぼに戻して肥料の一部として使ったりします。また、ワラは輪飾りの材料として、糠はヌカ漬けに用いたりもします。農業の世界では、昔からリサイクルは当たり前のことだったのです。
 いったいどこがおコメ?!

 稲穂についた籾をじっくり見てみよう。結構いろいろな部分で出来ています。
 いったいどこがおコメになるのでしょうか?